かつてない最上級を目指し、永遠となる――これが“N.ever”という言葉に込められた想いであり、ν[NEU]が完全完結の瞬間に辿り着きたいとする最高理想の形だ。この言葉を据えてまわった自身最後のワンマンツアーは、さながら年明けに控えるグランドファイナルに向けての総仕上げをするための旅だったともいえる。7月7日のツアー初日に「残り半年間、最高の時間にしよう」と意気込みを露わにしてスタートした全12公演。その間、重要だったのはν[NEU]がこれまでに築き上げてきたものを、“最後”という現実に向き合いながら刻み込んでいくこと。そして、終わりが決まっている以上“これから”がない彼らにとっては「“次”来てもらうために(ということ)をしなかった」とmitsuが語っていたが、その分「今日、最高だったな」と来た人が思えるライブを都度心がけていたという。まさに“今”を生きるという至極シンプルなことに全力を費やし、ライブというリアルタイムな美学で形作られるもので表してきた結果が、12月1日に渋谷REXで迎えたツアーファイナル公演にはあった。さらに、復活後のν[NEU]にとってホームだったといっても過言ではない渋谷REXで行う最後のライブだったこともあり、前日に感謝を込めたイベントライブを主催したことに続いて、これまでの集大成を見せるという心意気も込められていた。
「10年前は一方通行に終わったことをすごく後悔していたけど、1年半かけて終わりの旅を続けてくると、10年前よりはだいぶみんなと僕たちメンバーの気持ちがかなり近い形で終わりに向かってると思うんだよね。だから悔いはない」(ヒィロ)
ヒィロはリーダーという立場から、10年前にν[NEU]を解散“させてしまった”と後悔の念を度々口にすることがあったが、ツアー最終日に話したこの言葉にも一つの成果が表れていた。言うなれば、悔いなくゴールを迎えるための心の準備。ライブ中にメンバーの口から飛び出した、せつない、寂しい、悲しいという感情は、“終わる”という実感があるからこそ。だから、涙を流すことができるのだと思う。
しかし、ライブの幕開けから感傷的な空気が漂っていたかといえば答えはNOだ。本公演はツアーファイナルでありながらヒィロとタクミのバースデーも兼ねており、セットリストを組んだタクミ曰く「ハピネスワールド」がテーマとのこと。ν[NEU]初期のシンボルカラーであった蛍光グリーンと歴代のアー写を使用したオリジナルプリントが施された衣装で登場したメンバーをよく見てみると、mitsu&タクミ、ヒィロ&ЯeIのコンビでヘアスタイルが“双子ルック”になっている。そんな遊び心があったことに加え、タクミのロック・ギタリストな一面を存分に見せつけた「カレイドスコープ」から、ハードなテイストを内包した攻めのスタンスを見せていく。ラストランに突入した頃からメンバーが心に留めていた、思うがままの姿勢で活動するということにそれを重ねてみると、おのずとファンキーな力のこもったライブになるのも納得だろう。さらに「LIMIT」では、メンバー同士でアイコンタクトを交わしたり向きあったりするシーンも多数あり、楽しむことに忠実といった在り方を象徴しているようでもあった。しかしこの場面について触れたのちのMCによると、連日全力でライブを行った影響もあって正直喉の調子が良好だったとはいえなかったmitsuにヒィロが向き合ったとき、一緒に口ずさんでくれたことにお互いがグッと来ていたのだという。
これまでも、完璧に決まらないといったニュアンスの状況の折に「ν[NEU]らしい」と話題にしてきたのだが、それがこの日で言うならばmitsuに限らずヒィロも声が枯れていたことを挙げていた。ただし、それによってν[NEU]フリーク(ファン)たちとの絆を見せつけられる結果となったのは、嬉しい誤算だった。それというのも、「The 25th Century Love」でmitsuが「今日はみんなにいっぱい歌ってもらうよ」と言ったのを合図といわんばかりに、歌が途切れるとすかさずフロアから歌声が響いてくる場面が幾度も起こったのである。「どんどんみんなが頼もしくなっていく」と言ったことにも頷ける、完璧ではないことですら曝け出せる信頼の元に成り立つ揺るぎない協調性。今のν[NEU]がライブで描き出す一体感には温かさがあるということも、活動当時以上に蓄えてきた力だと感じられた。
ラストスパートを前にしてツアーを振り返る話題が飛び出すと、ЯeIは「寂しい気持ち。(演奏するのが)今日が最後っていう曲が、今日もあると思う。せつないけど、最近はメチャクチャ楽しい」と話していたのに続いて、ツアー中に多くのメディアで公開されたインタビューの中でタクミが「ν[NEU]は自分がありのままでいられる場所」と話していたことにmitsuが同意する場面も。そして、復活以降サポートギターを務めてきた夢時へお礼を述べると、夢時は「まじめな話」と切り出し、「ν[NEU]って今は4人でやってるけど、もともとは5人で。僕が知っているν[NEU]も、もちろん5人で。本当は華遊くんが一番ここに立っているべきで、立っていたかったと思う。それは、ν[NEU]でここにいる以上一秒も忘れたことないので。ν[NEU]が望むなら、ν[NEU]の完結を叶えるまでだと思ってステージに立ってます――本当に楽しい旅だった。ν[NEU]を知れてよかった」と、過去から現在へと繋いできたことを再確認させるような言葉が贈られた。これは、一丸となってグランドファイナルへ臨もうとするν[NEU]やν[NEU]フリークへ向けたエールのようでもあった。
こうして、夢時が誰かを“リーダー”と呼んだのは初めてだと話し、「夢時さんの“初リーダー”いただきました!リーダー、SAY!」とお道化ながらもヒィロのベースから始まったシャッフルナンバー「E.Y.E」以降で見せたハイライト。曲が進むごとに終わりへと向かって行くというなんともいえないジレンマを感じつつも、勢いを増していく。前述した一体感もここでは刺激的で、客席後方まですし詰め状態だったこともあり、安全面を考慮して「ピンクマーブル」を一度仕切り直すこともあったのだが、それでも「全員に楽しんでほしい。不細工な形かもしれないけど俺ららしいやり方で、ここまできたら完走しようぜ!」とエンディングに向かうにつれて感極まる表情を浮かべながらも「エンドロール」「everlasting light」へと駆け抜けていった。ずっと、ν[NEU]は強いバンドだと思っていた。けれど、この期に及んで実に人間らしい姿でステージに立っているメンバーの姿に、圧倒するだけではない、人と人が心を通わせる無機質を超越した真の強さを見た気がした。終盤にmitsuは「一度死んだバンドなのに、生きてるって思えた」と話していたが、このときばかりは笑顔が浮かんでいたのも印象的だった。
すべての楽曲を演奏し終えてしばし後ろを向いていたヒィロが、同じく後ろを向いてしゃがみ込んでいたmitsuに寄り添いながら再びメンバー全員が前を向くと、「楽しい感じで終わろう!アンコールじゃなくて、俺らからのお願い」と「スプラッシュ!」をプレイ。曲中、グッと何かを堪えるようにドラムの方へ向いたmitsuの表情はЯeIにしか知り得ないが、それに対して笑顔を向け、mitsuが前を向いた瞬間に譜面にはない一打を鼓舞するように力強く叩いてみせた。少しばかりセンチメンタルになる「スプラッシュ!」のメロディーに乗せてあらゆる感情がはじけていくように、足並みを揃えて迎えたラスト。最後の最後には、ヒィロ&タクミのバースデーをケーキでお祝いする場面もあり、ヒィロが顔面ケーキ(しかもケーキ2つ分!)でどっと笑いを起こしたのだが、これも「ν[NEU]らしい」といったところだろう。そういった振り切った行いのひとつひとつが、まずはここまで辿り着いたことの達成感の表れであったようにも感じられた。
1月4日に渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)で控えるグランドファイナルまで、いよいよ残すところ12月12日に開催されるWaiveとの2マンライブと、10年前に解散した日でもある12月29日に行われるファンイベントのみとなった。これまで1年半をかけて巡ってきた“終わりの旅”は、どのように終着点へとたどり着くのか。もちろんそれは、当日までわからない。終わってほしくはない、だが最後の瞬間にどんな景色がみられるのか楽しみでもあるという、なんとも不思議な気持ち。それでも、少なからずポジティブな気持ちを抱けたのは、ν[NEU]を永遠にするための準備を整えたといえる現状があるからこそ。間違いなく、最強のν[NEU]で完全完結の瞬間へ臨めると、今ならそう言い切れる。
Report◎平井綾子
Photo◎Intetsu
‐セットリスト‐
1.カレイドスコープ
2.LIMIT
3.Jumping Lady!
4.The 25th Century Love
5.Precious
6.RED EMOTION~希望~
7.最愛と渇望の日々
8.D’s Wonderland
9.YES≒NO
10.E.Y.E
11.in my secret…
12.ピンクマーブル
13.エンドロール
14.everlasting light
15.スプラッシュ!
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ν[NEU] ライブスケジュール
2025.1.4(土)渋谷公会堂
since2009〜2025 ν[NEU] FINAL LIVE
『エンドロール 〜何よりも大切な君へ〜』
開場17:15 / 開演18:00
前売券¥5,800(全指定席)
チケット受付URL:https://l-tike.com/neu/
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【ν[NEU] OFFICIAL】
◆Official Site https://neu-official.com/
◆Official X https://twitter.com/neu_official